チープカシオの魅力(デジタルモデル総論)

1,000円台から(高くても6,000~9,000円未満で)買えるカシオの腕時計は、俗にチープカシオと呼ばれ、その優れたデザインや正確に時を刻む品質の高さから、日本はもちろんのこと世界中に根強いファンを持つ。僕もチープカシオファンの一人だ。

チープカシオの多くは、ホームセンターやディスカウントストア、ドン・キホーテなどで、ショーケースに入れられずにパッケージのまま吊るされて売られている。

店頭価格は2023年5月現在、最も代表的なチープカシオのモデルであるCasio F-91W-1JH(ウレタンバンドのデジタル時計)で税込1,480円〜2,420円程度だ。

チープカシオには、アナログモデル、デジタルモデル、デジタル&アナログモデルの3つがあるが、私が愛用するのは専らデジタルモデルだ。

私が所有する時計の個別のレビューは別の機会に譲り、本稿ではデジタルモデルのチープカシオの魅力を紹介したい。

F-84W-1QJH 私が最初に購入したチープカシオだ
一眼で曜日・日付・時刻がわかる利便性

私は子供の頃から日付に無頓着で、今が何月なのかはさすがにわかるが、今日が何日なのかに興味がなく、日付を他人から聞かれたり書類に記入しなければならないときに分からず、それがちょっとしたストレスだった。

これまで日付を確認しなければならないときは、いちいちiPhoneをポケットから取り出して確認していたが、チープカシオを身につけ出してからは左手首を見るだけで瞬時に曜日・日付・時刻が分かり、この利便性はもう快感だ。ストレスフリー。

曜日・日付・時刻の表示の機能に関してデジタルモデルが優位なのは、次の2点だ。

・日付窓を備えたアナログモデルだと、二四六九士の月の朔日にカウンターを「1」に合わせる操作をしなければならないが、デジタルモデルではオートカレンダーとなっているので日付を調整する必要がない(デジタルモデルでも、一部モデルを除いてうるう年のときだけは日付調整が必要)。

・一部のデジタル&アナログモデルだと、アナログの長針・短針が、日付・曜日のデジタル画面を隠してしまう時間帯があり、視認性に欠ける。

時刻表示モード以外には、アラーム、時報(毎時0分にピピッと鳴る)、ストップウォッチ(ラップ機能付き)、時刻調整がある。操作はどれも直感的で簡単に使いこなすことができる。機能面では40年以上前のデジタル腕時計と比べて何も変わっていないのだが、逆に言えば40年以上も変わる必要がないほどの高い完成度を誇り世界中で愛用されているガジェットだと言える。

クラシカルで飽きのこないデザイン

文字盤は黒色のベースに濃紺の縁取りがされ、白・赤・緑・黄の差し色の配色が洗練されていて美しい。デザインとして統一感がありながらも、それぞれのモデルに個性があるので、気分によって付け替えるのが楽しい。

細い手首にも馴染む小ぶりなサイズ感とケースの薄さ・軽さ

私は身体が小柄で手首も細く、一般的な男性向けの腕時計だとサイズが大き過ぎて似合わないので、時計店のディスプレイでごついG-shockをみるたびにもう一回り小さければ買うのにな…かといってもbaby-Gにも欲しいモデルがないし…と常々思ってきたがが、そんな要望に応えてくれるのがチープカシオだった。

デジタルモデルの利点は、そのケースの薄さにある。その中でもムーブメントの593番が採用されているモデル(私が所有するなかではF-84W、A158W)は特に装着感が軽く、着けていてストレスがない。

究極のメンテナンスフリー(耐防水性、耐振動性、長寿命、月差±30秒)

私は自動巻の機械式腕時計も一本だけ持っていて、機械式腕時計も大好きだ。チチチチと秒針が小刻みに滑らかにすすんでいく様子を眺めていると、とてもリラックスした気分になる。仕事が立て込んで泣く泣く休日出勤したときでも、誰もいない物音一つないオフィスで仕事をしていると機械式腕時計からほんの微かに時を刻む音が聞こえてきて、なんとも心地よく仕事に集中することができた。ただ、機械式腕時計はゼンマイと歯車で動いているのでどうしても衝撃や振動に弱い欠点があり、日常生活の場面でも機械式腕時計をつけたまま自転車に乗ってデコボコ道を走るのは躊躇してしまう。

一方、日常生活でチープカシオを着けていて、壊れてしまったらどうしようと思ったことは一度もない。自転車に乗る程度の振動は無問題。水に沈めても壊れない。磁石をくっつけても狂わない。その上、電池寿命が約7年である。大事に使っていて壊れても、その時はまた買い直せばいいだけだから修理の必要もない。

ただ、気に入っているモデルがいつ廃盤になるかはわからないし、どこでにでも売っているわけでもないので、愛用するモデルは日常使用機と保管機とで二つ購入している。こんな買い方ができるのも廉価なモデルだからこそ。

月差の公称は±30秒となっているが、実際に使用してみると月差±10〜20秒程度であり、分単位での時刻の正確さを気にする人であっても2、3ヶ月に一度だけ時刻合わせをすればいい。

チープカシオは何の気兼ねもなしにガシガシ使えて、一切のメンテナンスが不要な、まさに究極のメンテナンスフリー腕時計である。

価格以上の価値と満足感

もし私が億万長者で、自分専用の腕時計をオーダーメイドで開発できるとしたら、次のようなオーダーをつけるだろう。

  1. 曜日・日付・時・分・秒のみが表示される(日付・時刻を確認する行為において、これら以外の情報はノイズでしかないので、その他一切の表示は不要)
  2. 装着感がないぐらい薄くて軽い
  3. 日常的な手入れや時刻合わせが不要
  4. シンプルで飽きのこないデザイン

つまり、私が腕時計に対して求めるオーダーの全てをチープカシオは満たしているのだ。チープカシオ万歳!